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まだ、「飲みニケーション」とか言っているの?

なぜ、職場改革をしても、社員は辞めていくのか?(前編)

⑤組織改革が後まわしの残業禁止デーは、本末転倒

 人件費削減やワークライフマネジメントのため、「残業禁止」に取り組む企業が増えています。「水曜日はノー残業デー」、なかには「毎日夜8時以降は残業禁止」という会社もあります。

「ノー残業」を実現するためには、残業しなくても業務が滞りなく進むよう、これまでの業務量や役割分担を見直し、調整する必要があります。「残業禁止」と「組織の構造改革」はセットで進められるべきものです。ところが、肝心の組織の構造改革には手をつけず、残業禁止だけを推し進めようとする企業が散見されます。そして、「残業するくらいなら、朝早く来てやりなさい」と朝残業を奨励するかのようなメッセージを発するため、現場の従業員は「仕事量が減ってないのに残業だけ禁止するということは、サービス残業をしろということなのか!?」と不満を募らせていくわけです。

 ただ、従業員側にも課題があります。「ノー残業」を決めるのであれば、時間内に仕事を終わらせるためにどうするのか、従業員自身も考える必要があります。チームで相談して無駄な仕事を減らすとか、仕事のやり方を工夫して効率化をはかるなど、働き方における創意工夫と改善が求められます。

 日本人は真面目な性質ゆえに、残業禁止を命じられれば、それを必死に守ろうとします。時間内に仕事が終わらなければ、仕事をこっそり家に持ち帰ってサービス残業する人も少なくありません。それで残業が減ったように見えても、問題が水面下に潜っただけで、本質的な問題解決にはなっていないことも多いのです。

 また企業側の視点に立っても、残業が減ったとしても、仕事が滞ったり、業績が下がっては元も子もありません。

 そんな問題意識で、全国津々浦々の企業を訪ね歩くなかで、長時間労働体質を改善し、残業の大幅減とともに業績向上も成功させた企業と出会いました。その経営者がこだわっているのは、「業務の棚卸し」だそうです。従業員一人ひとりと、部署単位での業務の棚卸しを定期的に行い、無駄な仕事をどんどん止める、アウトソーシングする、という意思決定を矢継ぎ早にしています。残業も一律にダメというわけではなく、理由があっての一時的な残業であれば認め、一方で慢性的な残業にはさらなる「業務の棚卸し」をするよう指導をしているそうです。

 また部署によって残業が多いところと少ないところがある状態が恒常的にならないようにも注意しています。残業が恒常的に多い部署は業務の棚卸しを実施、残業が少ない部署から人を異動させて、部署間の労働時間のアンバランスを是正し、会社として早く仕事を切り上げるのが当たり前だという風土を育んでいるのです。このように、「組織の構造改革」があってこそ、その結果として「残業禁止」が可能になるのです。

初出:『なぜ、職場改革をしても、社員は辞めていくのか?(前編)』ほんきになるWEB 2016年8月22日配信記事を、改題し再構成しました。

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前川 孝雄

まえかわ たかお

(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師

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大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「上司力研修」「育成風土を創る社内報」「人を活かす経営者ゼミ」などを手掛け、約300社で人が育つ現場づくりを支援。自らも年間100本超の講演、TV番組、雑誌に出演。YAHOO! 「前川孝雄の人が育つ会社研究室」など連載も数多く持つ。


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